不動産売却にかかる諸費用

①不動産を売却しようと思ったら考えを整理してみましょう

1. 売却の理由

【例】住み替え 相続 まとまった資金が必要 など

2. 希望条件

売却したい金額(それによって次の買い替え先や資金計画が大きく左右される) 売却したい時期(売却活動をスタートさせるタイミングの把握)

3. 本当に売却した方がよいのか?

売却せずに所有したまま人に貸す(賃料収入を得られる)
【⑦マイホームを人に貸すなら知っておきたい税金と確定申告】

売却せずにリフォームする、一戸建てなら建て替えて住み続ける

売却理由や、どのような条件なら売却したいのか、売却しない方がよいのか、などを考えた上で「売却したい(条件によっては売却したい)」と決まったら【②売却の手順を確認しましょう】

② 売却の手順を確認しましょう

1. 売却に適したタイミングを見極める必要があります

⑴ 自分の買い替えなどの時期から判断する

【例】未完成の新築マンションに買い替える場合や、土地を買って家を建てる場合は、建物の完成時期に合わせる(仮住まいや二重ローンなどの負担を軽減することができる)

⑵ 年間の人の移動シーズンから判断する

【例】新学期や新年度が始まる少し前の1月から3月に住宅を買う人が多いので、売却がしやすい

⑶ 税制の特例期限などから判断する

【例】

  • 譲渡所得に課税される税金を計算するときの税率は、売却した不動産を所有していた期間によって変わるので、所有期間を考慮する。
  • 自宅(居住用財産)を売却する場合、各種居住用財産の課税軽減特例を受けるための所有期間の要件を満たすよう考慮する
⑷ 不動産相場の動きから判断する

相場の変わり目を見極めることは不動産のプロでも難しい

一般的には不動産会社に査定してもらい、建物の築年数(居住した期間)や購入時の金額などから自分が納得できれば良いのではないでしょうか

2. 不動産を査定してもらいましょう

売却活動の手始めとして、まずは不動産会社に不動産を査定してもらう必要があります。
自分でも、物件情報サイトで似たような条件の物件と比較することで、ある程度の予想はできますが、サイトに出ている価格はあくまでも売主の希望価格なので、実際の成約価格とは違います。売りに出してからどの程度の期間が経っているかなども売主の状況によって様々です。
不動産会社によるプロの査定方法の手順を理解しておくことで、売却価格への納得感が変わってきます。

不動産会社への査定依頼をするなら【③不動産価格はどのように査定されるのでしょうか】
【④物件の査定を依頼して不動産会社を絞り込みましょう】

③ 不動産価格はどのように査定されるのでしょうか

不動産価格の査定にはいくつかの方法がありますが、対象物件や目的によって査定方法が異なります。代表的なものは、

個人の住宅売却では

1. 取引事例比較法

査定する不動産と条件が似ている物件の成約事例を探し、売買された時期や立地条件の違い、物件の個別性などを比較して価格を査定する方法

2. 原価法

建物について現時点で新築した場合の価格から、築年に応じた減価修正を行って価格を求める方法

賃貸している不動産の売却では

3. 収益還元法

賃貸用不動産などが将来生み出すと期待される収益から価格を割り出す方法

不動産流通推進センターという公益財団法人が「価格査定マニュアル」を定めており、これを利用する不動産会社が多いのですが、査定の対象と比較する事例物件をどのように選ぶかによって査定価格は変わってきますので、不動産会社(最終的には担当者の判断)によって査定価格が異なってきます。
また、売却を希望する人がどのように査定を依頼するかによって、査定価格が左右されることがあります。
【例】

  • なるべく高く売りたい売主に選んでもらうため、高めに査定する
    → 売るのに時間がかかることもあります
  • 確実に売却できるよう『堅め』の査定をする
    → 早く売れるかもしれませんが、もう少し高く売れる可能性があったかもしれません

インターネットで複数の会社に査定を依頼する場合などは、なるべく高く売りたい売主に選んでもらうため、高めに査定するケースが見られますが、高めに査定した不動産会社に依頼すれば、売るのに時間がかかることもあります。査定価格はあくまで目安であり、その価格で売れる保証はありません。

④ 物件の査定を依頼して不動産会社を絞り込みましょう

査定依頼は売却依頼ではなく「いくらぐらいで売れそうです」という提案をしてもらうだけですので、まずは複数の不動産会社に出してもらうのが一般的です(工事を頼むときの見積書をとる段階と同じです)。 簡易な査定と訪問による査定があります

1. 簡易査定

インターネットなどで売主が申告した情報に基づいて査定する簡易なもの

2. 訪問査定 

実際に不動産会社が現地を訪れて査定するもの

まずインターネットで数社に簡易な査定を依頼し、その結果を見てから、訪問してもらう不動産会社を3社程度に絞り込むのがよいでしょう。

訪問してもらった不動産会社から、査定額やその根拠について説明を聞くことで、売却依頼する不動産会社(『この人に任せよう』という担当者)を選べば、売却活動は納得のいくものになるでしょう。

売却するための活動を始めるなら【⑤不動産売却の依頼の仕方を知りましょう】

売却は税制優遇があり管理コストもかかりませんが、いつ売れるかわからないという不安もあります。一方、賃貸は家賃収入が得られますが、管理コストがかかり空室リスクもあります。判断基準(賃貸向きのマンションかどうか、賃貸に出す期間が決まっているか、ローン残債を査定金額が上回るかなど)を相談してから売却か賃貸かを決めたい方は、売買仲介だけでなく賃貸仲介や賃貸管理をしている所有不動産所在地に強い不動産会社を選ぶことで、より正確な賃料相場も同時に調べてもらえるでしょう。

⑤ 不動産売却の依頼の仕方を知りましょう

査定の結果、売却を依頼する不動産会社を選んだら、売主として媒介契約を交わします。
媒介契約とは、売却や購入を依頼する不動産会社との間で取り決める約束事のことです。国土交通省では標準媒介契約約款を策定しており、多くの不動産会社はこの約款を雛形に媒介契約書を作成しています。

媒介契約には以下の3種類があります。

1. 一般媒介契約

複数の不動産会社と媒介契約を結ぶことができる
売主が自分で見つけた買主と売買契約を締結できる(自己発見取引可)

2. 専任媒介契約

1社とだけ媒介契約を結ぶことができる
売主が自分で見つけた買主と売買契約を締結できる(自己発見取引可)

3. 専属専任媒介契約

1社とだけ媒介契約を結ぶことができる
売主が自分で見つけた買主と売買契約を締結できない

3種類ある媒介契約のうちどのタイプで契約するかは、売主が不動産会社と話し合って決めることができます。
一般媒介契約は、不動産会社同士が競い合って買主を探すことで買主を見つける機会が広がるなど、有利な条件で売却できるケースもありますが、複数の不動産会社と連絡を取り合うなど手続きが複雑になります。
専任媒介契約や専属専任媒介契約は、1社なので不動産会社に課せられた義務(国土交通省が定めた標準媒介契約約款による指定流通機構への登録や売主への業務報告など)が重く、全力を挙げて買主を探してくれるケースが多いでしょう。不動産会社としても、売買契約が成立すれば確実に仲介手数料がもらえるので、専任または専属専任を勧めてくるのが通常と考えらます。
それぞれに一長一短がありますので、よく考えて決めましょう。

⑥不動産売却にかかる諸経費と税金の計算をしましょう

不動産の売却には、税金や諸経費が主に以下の⑴~⑹かかり、手取りの金額はその分を差し引いた金額になります。

1. 不動産売却にかかる諸経費

売却にかかる費用は、主に以下の⑴~⑹です。

⑴ 不動産会社に支払う仲介手数料

売却価格により計算方法が定められていますが、通常は、
売却代金の3%+6万円+消費税(上限報酬)がかかります

例:売却価格4,000万円の場合 → 仲介手数料は138万6千円(消費税込)

⑵ 登記費用:ローンが残っている時などの抵当権抹消登記費用、司法書士への報酬
⑶ 引越し費用
⑷ その他
  • 測量費用(あらためて実測して売買する場合や境界が確定できない場合など)
  • リフォーム費用(リフォームしてから売却する場合)
  • 解体費用(古家を解体して売却する場合)

査定を依頼する不動産会社を選ぶ時に、不動産仲介の他にリフォーム工事や解体工事も請け負っている不動産会社を選べば、別の専門会社に見積りを依頼する手間を省くことができるでしょう。

2. 不動産売却にかかる税金

⑸ 売買契約書に貼付する印紙代

印紙税は、日常の経済取引に伴って作成する契約書や金銭の受取書(領収書)など特定の文書に課税される税金です。令和4年3月31日までの間に作成される印紙税の税額が軽減されます。

国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm

⑹ 譲渡税

売却によって売却益(譲渡所得)が出た場合は、譲渡所得に対して所得税・住民税がかかります。
土地や建物を売却して得た金額(譲渡収入)から、その不動産の購入代金や購入にかかった経費、さらに売却にかかった経費を差引いた金額を「譲渡所得」と呼びます。

譲渡所得=売却代金 -(購入代金(※減価償却要)+ 購入にかかった諸経費 - 売却にかかった諸経費)

譲渡所得に対してかかる税率は、不動産の利用形態や所有期間によって違いがあり、長期間保有した場合の方が率は低くなります。また、一定の要件を満たした居住用不動産に関しては譲渡所得に対し、最高3,000万円までの特別控除や低率分離課税などの軽減税率の適用があります。
特定のマイホームを売って代わりのマイホームに買いかえたときは、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができる買い替え特例があります。

購入価格より売却価格が安くなった場合、つまり譲渡損失が発生する場合、一定要件を満たせばその損失と他の所得を損益通算できる場合があります。 → 【⑧不動産の利用形態や所有期間による節税対策を知りましょう】へ

⑦ マイホームを人に貸す場合の税金と確定申告について知りましょう

家を人に貸して家賃収入を得るという選択をした場合、税金はどのように計算するのでしょうか。また、確定申告はどうなるのでしょうか。

1. 不動産所得として税金を納めなければなりません

マイホームを人に貸すのは、「土地や建物などの不動産の貸し付け」に該当します。そのため、その収入分は不動産所得として税金を納めなければなりません。
個人の場合、不動産所得にかかる税金は所得税・復興特別所得税(2037年12月31日まで)・住民税の3つです。

不動産所得 = 家賃収入など※1 – 賃貸に出すことでかかった必要経費※2

※1【マイホームを貸した際に不動産所得に含まれる項目】

  • 家賃(賃料)
  • 駐車場賃料
  • 名義書換料、承諾料、更新料などの名目で受け取るもの
  • 頭金や礼金という名目で受け取るもの
  • 敷金や保証金のうち返還しなくてもよいもの
  • 共益金という名目で受け取る電気代や水道代、掃除代など

※2【不動産所得を算出する際に必要経費として認められる項目】

  • 固定資産税、都市計画税
  • 不動産を取得した際の印紙税や登録免許税、不動産取得税
  • 損害保険料(火災保険料や地震保険料)
  • 減価償却費
  • 修繕費(建物や設備、外壁の塗装など)
  • マンションの管理費、修繕積立金
  • 物件を管理するための交通費やガソリン代、駐車場代、高速料金など
  • 管理会社への管理委託料
  • 賃貸物件を取得したときの借入金の利息分(ローン元本は含めない)
  • 管理会社担当者との打ち合わせ時の飲食代
  • 税理士や司法書士への報酬
  • 入居者募集のために管理会社などへ支払った広告宣伝費

2. 年間20万円以上の不動産所得があれば、確定申告が必要です

⑧ 不動産の利用形態や所有期間による節税対策を知りましょう

1. マイホームを売る場合

⑴ 「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」

不動産を売って得られた譲渡所得には所得税・復興特別所得税と住民税がかかりますが、マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。
自宅の売却なので、自分が住んでいることが原則ですが、以前住んでいた住宅でも、住まなくなってから3年目の年末までに売れば対象になります。
この特例を利用すると、譲渡所得にかかる税金の計算式は以下のようになります。
(譲渡所得-3000万円)×税率=税額
もし譲渡所得が3000万円より小さければ、税額はゼロになります。

国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm

⑵ 「所有期間が10年超のマイホームの軽減税率の特例」

売った年の1月1日現在で、そのマイホームの所有期間が10年を超えている場合は、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を適用した後の課税長期譲渡所得金額に対して、軽減された税率で税額を計算することになります。

譲渡所得6000万円以下の部分:14.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%+住民税4%)
譲渡所得6000万円超の部分:20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)

国税庁https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_2.htm#jyotosonshitu
参考(マイホーム以外)

  • 短期譲渡所得(所有期間が5年以下の場合)
    39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)
  • 長期譲渡所得(所有期間が5年超の場合)
    20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)
⑶ 「マイホームの買換えの場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」

売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるマイホーム(自宅)を売却した場合に条件を満たせば利用できます。
譲渡所得がマイナスの場合は売ってソンをしたことになるので、譲渡損失が出たことになります。
この場合、所得税や住民税が当然かかりませんが、それだけでなく、その譲渡損失の金額をその年の他の所得と相殺して所得税や住民税を減らす損益通算ができます。
さらに売った年の所得よりも譲渡損失のほうが大きく、その年で通算しきれなかった譲渡損失の金額がある場合には、その年の翌年以後3年内の各年分(合計所得金額が3,000万円を超える年分を除きます)の所得から繰越控除することができます。この特例は売った年の翌年から最長3年間の所得まで繰り越して控除できるので、売った年と合わせて最長4年間の所得税等や住民税がゼロになったり軽減されたりします。

国税庁https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_2.htm#jyotosonshitu

⑷ 「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」

令和3年12月31日までに住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの残高を下回る価額で売却して損失(譲渡損失)が生じたときは、一定の要件を満たすものに限り、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。さらに損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます(新たなマイホーム(買換資産)を取得しない場合であっても適用することができます)

国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3390.htm

⑸ 「特定の居住用財産の買換えの特例」

特定のマイホーム(居住用財産)を、令和3年12月31日までに売って、代わりのマイホームに買い換えたときは、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます(譲渡益が非課税となるわけではありません)。
例:1,000万円で購入したマイホームを5,000万円で売却し、7,000万円のマイホームに買い換えた場合には、通常の場合、4,000万円の譲渡益が課税対象となりますが、特例の適用を受けた場合、売却した年分で譲渡益への課税は行われず、買い換えたマイホームを将来譲渡したときまで譲渡益に対する課税が繰り延べられます。

国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3355.htm

住宅借入金等特別控除(ローン控除)なども含めて併用できないものがありますので、税額を試算して、額が大きい方を選びましょう。

2.  親の家を相続して売る場合

「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」
相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等
を、令和5年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。
親の自宅(親が住んでいたマンションや戸建住宅)を相続して売る場合、相続した子がその家を自宅として居住(同居)していた場合は「居住用財産」とみなされます。
→上記1.参照
国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm

3. 人に貸している家を売る場合

3000万円控除は自宅に住まなくなってから3年目の年末までに売れば、その家を人に貸していても適用の対象になります。

4.  家を取り壊した後の土地を売る場合

自宅として住んでいた家を取り壊してから売却する場合でも、取り壊した日から1年以内に売買契約を交わし、住まなくなって3年目の年末までに売却すれば、3000万円控除の対象になります。
ただし、家を取り壊した敷地を売買契約の日までに駐車場などとして人に貸した場合は、対象外となります。この点は家を取り壊さずに人に貸した場合とは異なるので注意が必要です。

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